2002/11/10
ナルシスの変貌、全画集No.645
 
英語タイトル The metamorphosis of Narcissus
0645の画像参照リンク
制作年 1937年
大きさ 縦51.0*横78.0cm
所在 ロンドン、テート・モダン
 
 著作権所有者の許諾未了のため映像を表示していません。TASCHENの全画集を参照ください。上記No.は全画集に表記のナンバーです。(もしくは、上記タイトル内の画像参照リンクから、AllPostersさんの画像を参照できます。) 管理人abe
 
 
管理人の感想
 風雲急を呼ぶ荒れ果てた水辺に屈み込む人と、卵を持つ手のオブジェとが同じ形に描かれており、一種の幻惑をおぼえます。また、絵の主人公が「屈んだ人」なのか、卵から出てきている水仙の花なのか見較べたくなります。
 
 
ダブルイメージ
 この絵は、屈み込む人と、卵を持つ手のオブジェが、ダブルイメージで描かれています。
  髪の毛=水仙
  頭   =卵
  左の膝=右手の親指
 このように2つの対象を並べてダブルイメージを表現するのは非常に珍しいです。普通にダブルイメージと言えば、ひとつの描写物が見方を変えることによって複数のものに見ることが出来るものを言います。
 
 
ギリシャ神話のナルシス
 ギリシャ神話におけるナルシスの話を少し説明します。
 美しいナルシスが自分自身の美しさに恋焦がれ、水に映った自分自身を見つめていると、水仙の花になってしまったという神話です。
 この神話は、数多くの絵画や物語の題材として使われてきました。
 また、自分自身を褒め称え愛する人をナルシストと呼ぶのは、この神話に基づいていて作られた言葉です。
 
 
ダリの詩
 ダリは、この絵と同名の詩を書いています。その詩は詩人でガラの前夫であったポール・エリュアールに捧げられています。その作品は下記の本に載っています。書籍109を参照
     題名 =ナルシスの変貌
     発行所=国文社
 *詩の出だし
    遠ざかってゆく黒雲の裂け目の下で
    春の目に見えない天秤が、
    四月の新しい空の中に
    揺れている。
 
 
水仙の花
 ダリが生まれ育ったカタルーニャ地方の言語カタルーニャ語に「頭の球根」という言葉があります。これは、精神分析の概念では「コンプレックス」の意味です。
 ナルシスが水仙の花に変貌してしまう神話が題材なので、水仙が描かれているのだと思います。水仙は球根から芽が出て、その球根は卵の中にあり、卵は屈んだ人の頭に対象しています。
 つまりこの絵は、屈んだ人と卵を持った手のオブジェとのダブルイメージばかりでなく、コンプレックスとナルシズムのダブルイメージをも秘めているのです。
 
 
フロイトとの出会い
 ダリが初めてフロイトの理論に触れたのは、「夢判断」でした。ダリがマドリードで画学生をしている時でした。ダリはフロイトの本のおかげで心の問題が大部分解決されたと述べています。
 フロイトがナチスに追われてロンドンにいる時に、ダリはフロイトに会っています。その時に持参してフロイトに見てもらった作品が「ナルシスの変貌」だったのです。フロイトに見てもらうに一番ふさわしい絵だったと思います。その当時、この絵はエドワード・ジェームズ所有でした。
 フロイトについては、「取り巻く人々」を参照してください。
 

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